英語学習において、「シャドーイング」「ディクテーション」は随分とメジャーな英語力向上のメソッドとなりました。
世の中には様々な学習方法が考案されますが、効果が少ないメソッドは淘汰され、効果のあるメソッドが生き残るものです。
今回は英語能力を向上させる上で、まさに生き残り、さらなる注目を浴びている「ディクテーション」についてその学習方法、効果について説明していきます。
Contents
英語学習におけるディクテーションとは?
「ディクテーション」とは何を意味するのでしょうか。
英語の辞書を引くと、「書き取り、口述、書き取ったもの、書き取りの試験、命令、指図、言いつけ」と出てきますね。
英語学習においては、この「書き取り」を英語音声を聞きながら実行していきます。
なぜこの英語の音声を聞きながら書き取っていくことが効果的なのかというと、以下が主に期待できます。
- 英語の音声を集中して聞き取る力が養われる
- どの単語が聞き取れていないかを正確に把握できる
- 聞き逃している音声の存在に気づける(The, a, atなど)、わかっているようでわかっていないことが浮き彫りになる
- わからない単語があっても、音声・文章の流れからどのような意味かを推測できる力がつく
書き取り自体はパソコンのキーボードでも良いですし(今の時代はPCを会議に持ち込み議事録を書くことも多いのでこちらの方が良いかも)、ノートに手書きでも構いません。
具体的なディクテーションの実施方法は後述しますが、使用する音声は30秒程度のものが良いでしょう。長すぎると集中力が途切れてしまいますので。
ディクテーションは本当に効果が出るのだろうか?
上記で述べた、
- 英語の音声を集中して聞き取る力が養われる
- どの単語が聞き取れていないかを正確に把握できる
- 聞き逃している音声の存在に気づける(The, a, atなど)、わかっているようでわかっていないことが浮き彫りになる
- わからない単語があっても、音声・文章の流れからどのような意味かを推測できる力がつく
これは即ち「リスニング能力・会話の推測能力UP」に繋がります。
また、スクリプトで音声の内容を確認し復習(シャドーイング含む)を経て語彙力、新しい英語表現、熟語などとの出会いにも通じます。知識が増えるということは、それだけ文脈を読む力も養われるのです。
知っている単語が聞き取れていないのか、そもそも知らない単語なのかの判別もつくようになります。知っている単語なのに聞き取れていない場合、なんのためにその単語を覚えたんだ?ということになります。
「Water」なんて誰でも知っている単語なのに「ワラ」と聞こえますよね。このような知っているのに知らない単語は実はたくさんあることに気づくでしょう。
ディクテーションは非常にメリットが大きいですね。
そして、やはり「書き取り」を反復して実施していくため、会社で議事録をとるような人には、話のポイントを掴む能力もつき、議事録の精度は間違いなく向上します。副次的な効果も期待できます。
日本語の会議でもメーカー企業担当者が使うその会社特有の言葉だったり、単語を口にしませんか?
そのような全く知らない単語でも、周辺の言葉を拾い集めていくことで、「なんとなくこんな意味なんだろう」とその場で推測しないと議論についていけません。(あとで言葉の意味は聞くようにしましょう)
そもそもリスニング能力を高めるには、英語をたくさん聞かなければなりません。でもつまらないですよね。英語を聞き続けるというのは非常にエネルギーが必要です。
気づけば内容を聞いていなかった、他のことを考えてしまっていた、寝てしまっていた・・・筆者はこのような感じで、あまりリスニングの勉強は捗りませんでした。聞き流しは本当に時間の無駄です。
しかし、ディクテーションは「書き取り」が求められますので、一回一回集中力を高める必要があります。
さらなるエネルギーは必要になりますが、意味のある勉強時間が確保できたと思いました。
ついでに、日本語でも相手の話を聞くことに集中力がなく、自分の大きな弱点だなと考えていたのですが、人の話をしっかり聞ける集中力をまさかのディクテーションで獲得することになりました。
筆者だけかもしれませんがこれもまた、副次的効果です。
ディクテーションには種類がある
ディクテーションには種類があります。
といっても、聞いている文章をそのまま全て書き取っていくものと、教材などを活用して、穴埋め問題的に答えを埋めていくものがあります。
穴埋めタイプは簡単で取っ付きやすいのですが、文脈を推測する能力が身につかないのと、自分の弱点を把握できないという点で「ディクテーション」というトレーニングの意味がなくなってしまっています。
教材などによく掲載されていますが、穴埋めタイプのディクテーションはやめましょう。
具体的なディクテーションの実施方法
シャドーイングの時と同様、初めて聞く音声を一生懸命書き取ろうとするのはやめましょう。そのような状況でディクテーションを始めても、全てを書取るのは不可能です。
まずは、音声を聞き、内容を大まかに把握しましょう。スクリプトはこの時点では見ません。
3回〜5回ほど聞いて、内容を把握できたところで、ディクテーションを始めます。
ディクテーション自体に慣れていない人は、会議の議事録をとるつもりで、ポイントを箇条書きしていきます。3回ほど音声を聞いてポイントは網羅しましょう。
この時点では完璧に各単語を正確に書く必要はありません。
次に、動詞、名詞や冠詞(‘a’、 ‘an’ 、 ‘the’ )も含め全ての語句の書き取りにトライします。聞き取れる限界まで書き取りましょう(10回程度を最大)。
本当に聞こえない音は何か、こちらを判明させましょう。
そして、最後にスクリプトを見て、自分の書き取りと答え合わせをします。自分の弱点が見えてくるはずです。
どの単語が聞き取れていないのか、勘違いして認識しているのか、どの冠詞が聞こえていないのか。
そもそもどの単語が知らないのか、どの表現を知らなかったのか。これはその場で覚える。
そして、もう一度スクリプトを見ながら音声を3回ほど聞きます。
より効果を発揮させるには、さらにその音声でシャドーイングをして仕上げると良いでしょう。
シャドーイングは最低10回ほど実行し、30秒の音声を体に染み込ませるつもりで取り組みましょう。
さらなるディクテーションのコツとして、以下があります。
- 難しい教材を選ぶのではなく、少し簡単だと思える教材(分野)を選ぶ
- 根気よく限界まで書取る努力をする
- 最後の分析が一番大切
難しい教材を選ぶのではなく、少し簡単だと思える教材(分野)を選ぶ
これはシャドーイングの記事でも述べたのですが、最初は「簡単だ」と思える教材でディクテーションは実行しましょう。
簡単と感じていても、いざ書き取りを始めてみると意外と聞き取れていない音があることに気づきます。最初から難しい音声でディクテーションを始めるとあまりにも聞き取れず、自信を失ってしまうことにも繋がります。
初級者〜上級者用のおすすめの教材は後述しています。
根気よく限界まで書取る努力をする
ディクテーションで30秒保ほどの音声を聞き、書き取りを行う際に、数回聞いて書けるところだけ書く、というのではなく、限界まで書き取りましょう。
「どうしても聞こえない音」を拾い、自分の耳を鍛えていくのが最も効率的です。大変ですが、辛抱強く実施しましょう。
とはいえ、10回程度を最大として、見切りもつけましょう。緩急は必要です。聞こえないものは聞こえません。
最後の分析が一番大切
限界まで聞き、書き取った内容をスクリプトで答え合わせをします。
何が聞こえていないのかが明白になると思います。例えば冠詞のtheが聞こえていないのはなぜか、ネイティブスピーカーはほぼ省略して話すことがあるのか、それとも自分の耳が拾えていないのか。
知っている単語なのに聞き取れていないのはなぜか、ネイティブスピーカーは自分の想像とは違う発音をしているのか、なぜ自分は誤った発音で覚えているのか。
スピードがは早いから聞こえなかっただけなのか、前後の単語がくっついているから違う音に聞こえたのか、そもそも新しい熟語表現だったのか、などなど。
何回聞いても聞こえない言葉も存在します。それは文脈からの「推測力」を鍛えていればわかる言葉になり得ます。日本語もそうですが、英語を話す人もあやふやな表現をすることもあります。
この分析作業、とても心が折れます。聞こえていなかった音を、もう一度音声を聞いて聞こえるようになるまで何度も聞きます。シャドーイングも実行します。
とても地味ですが、一つ一つの聞こえない音をしらみつぶしにしていくのが大切です。これを長期間続ければ、驚くほど英語耳が発達しているはずです。
PDCA、改善です。
継続も大変ですが、小さな努力の積み重ねが信じられない場所へあなたを連れていってくれます。あの伝説の打者、イチローの名言にも同じ言葉があります。
毎日ディクテーションを実行しましょう。
ディクテーションを過信してはいけない
ディクテーションは素晴らしい、というような内容でここまで書き進めてきましたが、注意点があります。
それは、ディクテーション一点集中学習をするのではなく、他の学習方法も合わせ技で活用すべき、ということです。
なぜなら本質的なリスニング能力というのは、会話の概要を把握し、ポイントを捉えることだからです。
ディクテーションは細かな音まで全て拾いにいきますが、それが癖になり、全体を捉えようとするのではなく、一語一語を普段の会話でも拾いにいってしまうようになるからです。
投手が投げる球をスライダーなのか高速スライダーなのか見極めるのに神経を使っているようなものです。
打者はたぶんスライダーだろう、という認識でボールを打っています。同じことです。
毎日ディクテーションは実施すべきですが、一緒にシャドーイングや、CNNの短いニュースをただ聞いて、会話の内容全体を捉えにいく練習も実施しましょう。
また、細かいスペルまでディクテーションで正確に書く必要はありません。そこに神経を使う必要はありません。
長い音声も使うのはやめましょう。人間の集中力は長くは持ちません、30秒程度の音声を探しましょう。
ディクテーションに活用できる音声探しの旅(教材とアプリ)
やはり教材選びは面倒ですが、ここで筆者がお勧めの音声を列挙しておきますので参考にしてみてください。
上記でも述べましたが、自分が少し簡単だな、と思う程度の教材を選ぶのがコツです。
聞いて書き取る英語リスニング
まずは「CD付 聞いて書きとる英語リスニング300問」。王道の本です。
非常にシンプルな教材ですが、英語の初心者から中級者までにおすすめです。比較的ゆっくりな音声で300問を繰り返し聞き返すことでその効果は実感できるはずです。
語句ごとのつながりについても詳細に解説されており、「そういうことだったのか」という気づきも得られるでしょう。
■『英語高速リスニング』シリーズでおなじみの藤澤先生が、
「読めるけど聞きとれない」を克服するトレーニング法を伝授!「I can と I can'tの聞き分けができない…」
簡単な英文のはずなのに聞きとれない原因を、5つのパターンから解明し、
300問の実践トレーニングで耳を鍛える、日本人のためのリスニング入門書です。
よく知っている英単語や簡単な英文でも、ネイティブの流暢な英語を耳で聞いたとき、
目で読んだときとの大きなギャップを感じるのではないでしょうか。
本書は日本人が特に苦手とする5つのパターンについて基礎編で丁寧に解説した後、
エクササイズ編で徐々にレベルアップしながらディクテーションの問題を解いていくので、
初心者でも基礎から着実にリスニング力を鍛えることができます。■300問のディクテーション問題で、基礎から耳を鍛える!
ディクテーションとは、CDから流れてくる英文を聞いて書きとる、
リスニング力の向上に大変効果的な英語学習法です。
本書は、特に初めてディクテーションに挑戦する方でも、気軽に取り組めるように、
「目で見るとわかる簡単な単語ばかりなのに、耳で聞くとわからない」レベルの
英文を厳選した、ディクテーションの入門書にぴったりの一冊です。初級150問⇒中級100問⇒上級50問と徐々にレベルアップしながら、300問の
ディクテーション問題を解くことで、基礎からリスニング力を鍛えることができます。
日本人が苦手とする流暢な英語の「5パターン」を、ピンポイントで攻略する300問
のディクテーション問題にチャレンジし、「英語を聞きとる耳」を作っていきましょう
究極の英語ディクテーション Vol. 1
「【CD・音声DL付】究極の英語ディクテーション Vol. 1 (究極シリーズ)」。
こちらも初心者から中級者向きです。
中級者の人は、簡単すぎると感じてしまうかもしれませんが、「正確に一つ一つの音を聞き取る」となるとその難易度の感じ方は変わってきます。
つまり、ディクテーションを始めたばかりの中級者にはうってつけの教材だと考えています。穴埋め問題もありますが、あまり意味がないので全てを聞き取るディクテーションを実施していきましょう。
デザインもシンプルで勉強しやすい教材です。
英文を聞いて書き取る「ディクテーション」を通して、リスニング力の「自己診断」と「強化」ができる30日プログラム!
見れば分かる英文なのに、なぜ聞き取れない? そんな悩みを持つすべての人に効く!・「発音」「文法」の2大テーマで「聞き取れない原因」をあぶり出し、弱点攻略。
・「速い英語」「出身国別なまり」「自然な口調」などにも挑戦し、応用力アップ。
・さらに、多彩な音声で耳を慣らすダウンロード特典あり。
・基礎語彙+中学英文法。単語力に自信がなくても、じっくりリスニングに集中できる。
日本人は英語のここが聞き取れない
「日本人は英語のここが聞き取れない―3週間でできる弱点克服トレーニング【CD1枚付き】」。
中級者以上向けです。分量はあまり多くないですが、会話の細かな部分まで焦点が当てられているのが本書の特徴です。
通信講座『ヒアリングマラソン』に連載中の人気コーナー「ディクテーション・コンテスト」。受講者は、毎月出題される課題文をディクテーションして投稿し、聞き取り・書き取りの正確さを試します。
本書は、このコーナーに寄せられた投稿5000件の分析データから生まれました。分析の結果、明らかになったリスニングの2大傾向とは…
1・「間違えやすい個所は集中します」
ある学習者が間違えたところでは、別の学習者も間違えます。2・「間違え方も同じです」
1の間違い集中個所では、多くの人が同じタイプのミスをする傾向にあります。本書では、日本人が陥りがちなリスニングの弱点に鋭く迫り、原因を探りつつ役立つアドバイスを提供します。
●あなたもディクテーションに挑戦できる!
「ディクテーション・コンテスト」の過去問から15題を取り上げ、読者の皆さんにも「実際にディクテーションしていただく」学習プロセスを取り入れています。●「間違い上位ランキング」を掲載!
それぞれの課題文について、「どの個所で/どのように/投稿者の何パーセントが」間違えたかを示す「間違い率」を算出。その高い順に「間違い上位ランキング」として表示しています。答え合わせとともにランキングが明かされる仕組み。さて、多くの人が間違えたあの個所を、あなたは正しく書き取れるでしょうか?他者との比較を通して、自らのリスニング力を客観的に診断してみましょう。●あなたが聞き取れない原因は、ここにある!
間違えっぱなしでは意味がありません。「何故多くの人が、同じ間違いをするのか」「どうしたら正確に聞き取れる・書き取れるのか」といった視点から丁寧な解説を付し、リスニングの本質に光を当てます。●1日1題 取り組めば、15日(=3週間)で完成。
この3週間が、あなたのリスニングを変えます。
アプリ
個人的にアプリはあまり学習が捗らないのですが、人によってはアプリが相性が良いかもしれないので紹介します。
王道アプリは以下です。
まとめ
今回はディクテーションについて解説してきました。
ディクテーションは大手のコーチング式英語スクールなどでも積極的に取り上げられており、様々な学習方法が次々に出てくる中で今も生き残っている確立された学習メソッドです。
ぜひ、取り組んで自身の英語水準を高めていきましょう。